安全衛生管理者とは?その名前の資格はない|正しい役職と選び方

安全衛生管理者とは何かを示す図解。その名前の役職はなく、安全管理者と衛生管理者などの正しい名前があることを示すアイキャッチ 法令と管理体制
お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • 上司に「安全衛生管理者を決めておいて」と言われたが、調べても資格が見つからない
  • 安全管理者・衛生管理者・安全衛生推進者……名前が似ていて違いがわからない
  • うちの職場で、結局どれを選べばいいのか知りたい
この記事でわかること
  • 「安全衛生管理者」と呼ばれがちな、6つの正しい役職の名前
  • それぞれの役目・必要な職場・資格の違い
  • 人数と業種から、自分の職場で必要な役職を選ぶ方法
結論|まず30秒でわかる答え

「安全衛生管理者」という名前の資格や役職は、労働安全衛生法にはありません。多くの場合、「安全管理者」と「衛生管理者」をまとめた呼び方か、「総括安全衛生管理者」「安全衛生推進者」「安全衛生責任者」の言い間違いです。どれが必要かは、事業場(工場や支店など、場所ごとの職場の単位)の人数と、業種で決まります。

かんたんに言うと、まず「誰が、どの名前のつもりで言ったのか」を確かめるのが近道です。この記事では、似た名前の役職を1つの表に並べ、自分の職場で必要なものを選べるようにします。

根拠

法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

似た名前の6つの役職を1つの表で比べる

「安全衛生管理者」と呼ばれがちな役職は、大きく分けて6つです。上の4つは工場や事務所などふだんの職場のため、下の2つは建設現場など、複数の会社が一緒に働く場所のための役職です。

この表の見方:左から順に「名前 → 何をする人か → どんな職場で必要か → 資格」です。人数は、その事業場で常時働いている人の数です。

正しい名前何をする人か必要な職場資格
総括安全衛生管理者安全と衛生の全体のまとめ役業種により100人以上・300人以上・1,000人以上資格は不要。工場長など、その事業場のトップがなる
安全管理者けがや事故を防ぐ技術面の担当製造業・建設業・運送業などで50人以上理科系の学歴と実務経験+研修
衛生管理者健康と職場環境の技術面の担当すべての業種で50人以上衛生管理者の免許(国家試験)など
安全衛生推進者(衛生推進者)小さな職場の安全衛生の担当10人以上50人未満講習の修了など
統括安全衛生責任者建設現場などで、元請として全体を指揮する建設業・造船業の元請で、現場の作業者が50人以上(一部の工事は30人以上)資格は不要。現場所長など、その場所のトップがなる
安全衛生責任者下請の会社の窓口として、元請と連絡・調整する統括安全衛生責任者がいる現場で働く、下請の会社法令で決まった資格はない
注意|ここで間違えやすい

「管理者」と「責任者」で、まったく別の役職になります。総括安全衛生管理者はふだんの職場のトップ、統括安全衛生責任者は建設現場の元請のトップです。「総括」と「統括」も別の言葉なので、書類では1文字ずつ確かめてください。

安全衛生管理者と間違えやすい6つの役職の図。ふだんの職場の4つの管理者と、建設現場の2つの責任者に分けて示す

工場や事務所で必要な4つの役職

ふだんの職場では、人数が増えるにつれて、安全衛生推進者 → 衛生管理者・安全管理者 → 総括安全衛生管理者、と役職が増えます。どの役職も、法律では「選任(その役目の人を正式に決めること)しなければならない」と書かれた義務です。

  • 義務(罰則あり) 総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者の選任(違反は50万円以下の罰金。第120条)
  • 義務(罰則なし) 安全衛生推進者・衛生推進者の選任(罰則の条文には挙げられていない。ただし義務であることは同じ)

衛生管理者:唯一の「免許」がある役職

衛生管理者は、働く人の健康と職場環境を守る担当です。常時50人以上の労働者を使用する事業場では、業種を問わず選任が必要です(施行令第4条)。

資格は、国家試験に合格して受ける衛生管理者の免許が基本です。免許には第一種・第二種・衛生工学の3つがあり、業種によって使える免許が違います。

  • 製造業・建設業・運送業・医療業・清掃業など13の業種:第一種か衛生工学の免許が必要
  • それ以外の業種(小売業・金融業・情報通信業など):第二種でもよい

医師・歯科医師・労働衛生コンサルタントなども、衛生管理者になれます(規則第10条)。

安全管理者:試験はなく「学歴+実務経験+研修」

安全管理者は、機械や作業でのけがを防ぐ技術面の担当です。製造業・建設業・運送業など決められた業種で、常時50人以上の労働者を使用する事業場に必要です(施行令第3条)。

「安全管理者は国家資格」と書かれていることがありますが、衛生管理者のような試験や免許はありません。規則第5条で決まった条件を満たした人が、選任されてはじめて安全管理者になります。

  • 大学・高専の理科系を卒業し、その後2年以上、産業安全の実務をした人
  • 高校の理科系を卒業し、その後4年以上、産業安全の実務をした人
  • 上のどちらかの人は、さらに厚生労働大臣が定める研修(安全管理者選任時研修)の修了が必要
  • 労働安全コンサルタントなども、なれる

安全衛生推進者:10〜49人の職場の担当

常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場では、安全衛生推進者を選任します(規則第12条の2)。安全管理者が必要な業種(製造業・建設業など)は「安全衛生推進者」、それ以外の業種は衛生だけを受け持つ「衛生推進者」です。

資格は、登録を受けた機関の講習を修了した人などです(規則第12条の3)。ほかの役職と違い、監督署への報告は求められていません。そのかわり、氏名を作業場の見やすい場所に掲示するなどして、働く人に知らせる必要があります(規則第12条の4)。

総括安全衛生管理者:大きな事業場のまとめ役

総括安全衛生管理者は、安全管理者と衛生管理者を指揮して、事業場の安全衛生をまとめる役職です。必要になる人数は業種で違います(施行令第2条)。

  • 林業・鉱業・建設業・運送業・清掃業:常時100人以上
  • 製造業・電気業・ガス業・各種商品小売業・旅館業など:常時300人以上
  • その他の業種:常時1,000人以上

資格は要りません。そのかわり、法律で「その事業場で事業の実施を統括管理する者をもって充てなければならない」と決まっています(第10条第2項)。かんたんに言うと、工場長や支店長など、その場所のトップが就く役職です。

根拠
  • 労働安全衛生法 第10条・第11条・第12条・第12条の2
  • 労働安全衛生法施行令 第2条〜第4条
  • 労働安全衛生規則 第5条(安全管理者の資格)・第7条(衛生管理者の選任と免許の種類)・第10条・第12条の2〜第12条の4(安全衛生推進者等)
  • e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」

法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

安全衛生管理者と呼ばれがちな4つの役職の資格の違いの図。衛生管理者は免許、安全管理者は学歴と実務経験と研修

建設現場などで必要な「責任者」の役職

建設現場や造船所では、元請(工事全体を引き受けた会社)と、下請の会社の人が同じ場所で働きます。会社をまたいだ連絡が切れると事故につながるため、ふだんの職場とは別の役職が決まっています。

統括安全衛生責任者(元請)

  • 元請が選任する、現場全体の指揮役
  • 建設業・造船業で、同じ場所の作業者が常時50人以上(トンネル工事などは30人以上)
  • 現場所長など、その場所のトップが就く(第15条第2項)

安全衛生責任者(下請)

  • 下請の会社が選任する、元請との窓口
  • 統括安全衛生責任者と連絡し、受けた連絡を自社の人に伝える(規則第19条)
  • 選任したら遅滞なく(できるだけ早く)元請に知らせる(第16条第2項)

このほか、統括安全衛生責任者を選任した建設業の元請は、技術面の担当として元方安全衛生管理者も選任します(第15条の2)。こちらは、理科系の学歴と、建設工事の安全衛生の実務経験が必要です(規則第18条の4)。

POINT

建設業の会社でも、本社や営業所(ふだんの職場)では、安全管理者・衛生管理者・安全衛生推進者のほうが必要です。「現場の役職」と「事業場の役職」は、別々に確かめましょう。

根拠
  • 労働安全衛生法 第15条・第15条の2・第16条、施行令 第7条
  • 労働安全衛生規則 第18条の4(元方安全衛生管理者の資格)・第19条(安全衛生責任者の職務)

法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

建設現場で元請が統括安全衛生責任者、下請が安全衛生責任者を選任して連絡し合う関係を示した図

自分の職場で必要な役職の選び方

「安全衛生管理者を決めて」と言われたら、次の順に確かめると、正しい役職がわかります。人数は、パート・アルバイト・派遣も含めて、事業場ごとに数えます。

Q1 建設現場などで、自社が元請または下請として働く話ですか?
はい → 元請なら統括安全衛生責任者(作業者が常時50人以上の現場など)。下請なら、元請が統括安全衛生責任者を選任する現場で安全衛生責任者
いいえ → Q2へ
▼
Q2 その事業場で、常時10人以上が働いていますか?
はい → Q3へ
いいえ → 選任が必要な役職はなし(教育や健康診断などは必要)
▼
Q3 常時50人以上ですか?
いいえ(10〜49人) → 安全衛生推進者(業種によっては衛生推進者)
はい → 衛生管理者。製造業・建設業・運送業などは安全管理者も。さらに人数が多ければ総括安全衛生管理者

当てはめ例:3つの職場の場合

この表の見方:どれも架空の職場です。人数はパート・派遣を含めた、事業場ごとの数です。

職場の例必要な役職理由
金属部品の工場(正社員45人+パート15人=60人)安全管理者、衛生管理者(第一種)製造業で50人以上。パートを数え忘れると「45人」と間違える
広告代理店の事務所(30人)衛生推進者10〜49人で、安全管理者が必要な業種ではない
下請として入るビルの建設現場(作業者が常時50人以上)安全衛生責任者元請が統括安全衛生責任者を選任する現場の、下請の会社だから

なお、50人以上の事業場では、この記事の役職のほかに、産業医の選任や衛生委員会の設置なども必要です。

安全管理者・衛生管理者・総括安全衛生管理者は、選任が必要になった日から14日以内に選任し、遅滞なく(事情が許すかぎり早く)所轄の労働基準監督署に報告します(規則第2条・第4条・第7条)。

自分の職場で必要な安全衛生管理者の正しい役職を、建設現場かどうかと人数で選ぶ手順の図

「安全衛生管理者」まわりのよくある間違い

よくある間違い正しくは
社内の書類に「安全衛生管理者」と書いて済ませる法令上の役職名(衛生管理者など)で選任し、報告する
安全管理者も試験を受けて取る国家資格だと思っている試験はない。学歴と実務経験の条件を満たし、研修を修了した人を選任する
製造業の工場で、第二種衛生管理者を選任した製造業・建設業・運送業などは第一種(か衛生工学)が必要
安全衛生推進者を監督署に報告しようとして、様式が見つからない報告の決まりはない。氏名を掲示するなどして、働く人に知らせる
「総括安全衛生管理者」と「統括安全衛生責任者」を取り違える総括はふだんの職場のトップ、統括は建設現場などの元請のトップ
POINT

社内で「安全衛生管理者」という呼び名を使うこと自体は問題ありません。ただし、法律の義務を果たしたことになるのは、法令上の役職名で、条件を満たす人を選任したときです。

よくある質問

Q. 安全衛生管理者という資格はありますか?

A. ありません。法律にある名前は、安全管理者・衛生管理者・総括安全衛生管理者・安全衛生推進者などです。

Q. 安全管理者と衛生管理者の違いは何ですか?

A. 安全管理者はけがや事故を防ぐ担当、衛生管理者は健康と職場環境を守る担当です。免許があるのは衛生管理者だけです。

Q. 従業員30人の会社では何を選任しますか?

A. 10人以上50人未満なので、安全衛生推進者を選任します。製造業や建設業などでない業種は衛生推進者です。

Q. 安全衛生推進者は監督署に報告が必要ですか?

A. 報告の決まりはありません。そのかわり、氏名を作業場に掲示するなどして、働く人に知らせる必要があります。

Q. 総括安全衛生管理者と統括安全衛生責任者の違いは?

A. 総括安全衛生管理者は大きな事業場のまとめ役、統括安全衛生責任者は建設現場などで元請が置く全体の指揮役です。

まとめ:「安全衛生管理者」と言われたら、正しい名前に置きかえる

POINT
  • 「安全衛生管理者」という名前の資格や役職は、法律にはありません。
  • ふだんの職場は、10〜49人で安全衛生推進者、50人以上で衛生管理者(業種により安全管理者も)、さらに大きいと総括安全衛生管理者です。
  • 建設現場などでは、元請が統括安全衛生責任者、下請が安全衛生責任者を選任します。
  • 免許があるのは衛生管理者だけ。安全管理者は学歴と実務経験+研修です。

かんたんに言うと、「人数」と「建設現場かどうか」の2つを確かめれば、正しい役職の名前が決まります。

S
シラス
電験三種 / QC検定1級 / メーカーの設計・品質保証 実務10年

メーカーの製造現場で設計と品質保証に携わってきた経験をもとに、職場の安全と健康のルールを図解しています。法令は厚生労働省の資料と条文で確認し、根拠を示して説明することを大切にしています。

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