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防毒マスク(いわゆるガスマスク)は、作業場のガスの種類に合う吸収缶(ガスを吸い取る薬剤が入った缶)を選びます。国の「防毒マスクの規格」で、吸収缶はハロゲンガス用(灰色と黒色)・有機ガス用(黒色)・一酸化炭素用(赤色)・アンモニア用(緑色)・亜硫酸ガス用(黄赤色)に色分けされています。酸素が18%未満の場所や、ガスの濃度がわからない場所では使えません。交換は臭いではなく、破過曲線図から決めた使用時間で行います。
防毒マスクは、合わない吸収缶をつけると、マスクをしていてもガスをそのまま吸ってしまいます。まず「何のガスか」「どのくらいの濃さか」「酸素は足りているか」を確かめてから選びましょう。
- 防毒マスクの規格(平成2年労働省告示第68号)第1条・第2条・第8条
- 労働安全衛生規則 第27条(規格に合ったものを使う)
- 厚生労働省 法令等データベース「防毒マスクの規格」(平成2年労働省告示第68号)
- 厚生労働省「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(令和5年5月25日 基発0525第3号)
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。
防毒マスクとは:ガスを吸収缶で吸い取るマスク
防毒マスクは、有害なガスや蒸気を吸収缶でこし取って、きれいになった空気を吸うマスクです。吸収缶の中の活性炭などがガスを取り込みますが、取り込める量には限りがあり、いっぱいになるとガスが通り抜けます。これを破過(はか)といいます。
防毒マスク
- 有害なガス・蒸気を吸収缶で取り除く
- ガスの種類ごとに吸収缶を選ぶ
- 粉じんも混ざるなら、防じん機能つきを選ぶ
- 酸素が足りない場所では使えない
防じんマスク
- 粉じん・ヒューム・ミストをフィルターでこし取る
- ガスや蒸気は取り除けない
- 有毒なガスがある場所では使わない
- 酸素が足りない場所では使えない
防毒マスクも防じんマスクも、まわりの空気をきれいにして吸うだけで、酸素を足すことはできません。酸素が足りない場所(酸素欠乏のおそれがある場所)や、ガスの濃度がわからない場所では使わず、空気呼吸器や送気マスクなどの給気式のものを使います。
防毒マスクでは防げない「酸欠」の起きやすい場所と防ぎ方がわかる
吸収缶は、水をこす浄水器のカートリッジに似ています。こす力には限りがあり、使い続けると、いつか汚れが通り抜けます。見た目ではわからないので、使った量(時間)で交換を決めます。
- 基発0525第3号 第1の4(1)ア・イ(酸素欠乏・濃度不明の場所、有毒ガスがある場所での使い分け)
- 厚生労働省「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(令和5年5月25日 基発0525第3号)
情報の確認時点:2026年10月。

吸収缶の色は5種類:規格で決まっている
「防毒マスクの規格」は、吸収缶を対象のガスごとに決まった色で塗り分け、色以外の方法(文字など)でも種類を表示するよう定めています。左が吸収缶の種類、右が缶の側面の色です。
防じん機能つきの吸収缶は、ろ過材がある部分に白線が入ります(規格 第8条第5項の備考)。
| 吸収缶の種類 | 対象になるガス・蒸気 | 吸収缶の色 |
|---|---|---|
| ハロゲンガス用 | ハロゲンのガス・蒸気(例:塩素) | 灰色と黒色(二層に分ける) |
| 有機ガス用 | 有機化合物のガス・蒸気(例:シンナーなどの有機溶剤) | 黒色 |
| 一酸化炭素用 | 一酸化炭素 | 赤色 |
| アンモニア用 | アンモニア | 緑色 |
| 亜硫酸ガス用 | 亜硫酸ガス(二酸化硫黄) | 黄赤色 |
義務 この5種類の防毒マスクは、国の型式検定(国が型ごとに性能を試験して合格を出す制度)の対象です。規格に合わないものは売ることも貸すこともできず(安衛法 第42条)、会社も規格に合ったものしか使えません(安衛則 第27条)。買うときは、吸収缶と面体の両方に型式検定合格標章がついているかを確かめます。
吸収缶と面体は、型式検定合格番号が同じ組み合わせで使ってはじめて、検定に合格した防毒マスクとして働きます。吸収缶だけで検定を受けたものもあるので、ほかのメーカーの吸収缶をつけるときは、取扱説明書で使える組み合わせかを確かめます。
5種類以外のガスのとき
硫化水素やシアン化水素など、5種類に入らないガスには、そのガスに効く吸収缶を使います。通達は、JIS T 8152「防毒マスク」に基づいた吸収缶を使うか、メーカーに問い合わせて選ぶよう求めています。色は5種類の決まりの外なので、製品の表示で確かめてください。
- 防毒マスクの規格 第1条(5つの区分)・第8条第5項(吸収缶の色)
- 労働安全衛生法 第42条・第44条の2、施行令 第14条の2第6号、安衛則 第29条の2
- 基発0525第3号 第3の1(1)(型式検定合格標章の確認、5種類以外のガス)
- 同 告示 第8条(表示等・吸収缶の色)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
- 厚生労働省「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(令和5年5月25日 基発0525第3号)
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

マスクの種類は3つ:使えるガスの濃さで分かれる
防毒マスクは、吸収缶のつけ方と大きさで3種類に分かれ、それぞれ使えるガス・蒸気の濃度の上限が決まっています。右の列の濃度以下の場所でだけ使えます。
1%=10,000ppm、0.1%=1,000ppm。濃度は吸収缶の性能にもとづく上限で、実際に有効に使える濃度はこれより低くなることがあります(基発0525第3号 第3の1(5)イ)。
| 種類 | 形 | 使える濃度(ガス・蒸気) |
|---|---|---|
| 隔離式 | 大きな吸収缶を腰などにつけ、連結管(ホース)で面体とつなぐ | 2%以下(アンモニアは3%以下) |
| 直結式 | 吸収缶を面体に直接つける | 1%以下(アンモニアは1.5%以下) |
| 直結式小型 | 小さな吸収缶を面体に直接つける。非緊急用 | 0.1%以下 |
面体(顔にあてる部分)は、顔全体をおおう全面形と、鼻と口のまわりだけをおおう半面形があります。目への刺激があるガスや、目を守る必要があるときは全面形が向いています。
防毒マスクを使えるか・どれを選ぶかの判定
いいえ → 防毒マスクは使えません。空気呼吸器・送気マスクなど給気式のものを使う
いいえ → JIS T 8152 に基づく吸収缶か、メーカーに問い合わせて選ぶ
いいえ → 上限を超えるなら給気式のものを使う
いいえ → 防じん機能なしの吸収缶でよい
- 防毒マスクの規格 第1条・第2条・第7条
- 基発0525第3号 第1の4(1)ア、第3の1(4)(5)
- 厚生労働省 法令等データベース「防毒マスクの規格」(平成2年労働省告示第68号)
- 厚生労働省「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(令和5年5月25日 基発0525第3号)
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

作業別の選び方:当てはめ例
使う化学物質の名前と、SDS(安全データシート)の「ばく露防止及び保護措置」の欄を見て、吸収缶の種類を決めます。作業と、選ぶ吸収缶の組み合わせの例です。
どれも架空の例です。実際の選び方は、濃度と酸素濃度を確かめたうえで決めてください。
| 作業の例(架空) | 主なガス・蒸気 | 選ぶもの |
|---|---|---|
| シンナーで部品を拭く・洗う | 有機溶剤の蒸気 | 有機ガス用(黒) |
| スプレーガンで塗料を吹き付ける | 有機溶剤の蒸気と塗料の粒 | 防じん機能つきの有機ガス用(黒・白線入り) |
| アンモニアを使う冷凍設備の点検 | アンモニア | アンモニア用(緑) |
| 一酸化炭素が出るおそれのある設備のまわりの作業 | 一酸化炭素 | 一酸化炭素用(赤)の隔離式。酸素不足や高い濃度のおそれがあれば給気式 |
SDSのどこを見れば、必要な保護具がわかるかを確かめられる
有機ガス用の吸収缶は、試験に使うガス(シクロヘキサン)と比べて、メタノール・ジクロロメタン・二硫化炭素・アセトンなどでは破過までの時間が大きく短くなります。これらを扱うときは、その物質での破過時間や専用の吸収缶を、メーカーに問い合わせて選びます。2種類以上のガスが混ざるときは、それぞれに合格した吸収缶を選びます。
義務(罰則あり) 有機溶剤の業務のうち、タンクの内部での業務や、局所排気装置などを設けないで行う業務など(有機則 第33条第1項の各号)では、会社は送気マスク、有機ガス用防毒マスクなどを使わせなければなりません。数は同時に働く人の数以上を備え(第33条の2)、働く人も使う義務があります(第34条)。
- 基発0525第3号 第3の1(4)エ(吹付け塗装)・(5)オ・カ(有機ガスの種類と破過時間)・(7)(混ざったガス)
- 有機溶剤中毒予防規則 第33条・第33条の2・第34条
- 厚生労働省「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(令和5年5月25日 基発0525第3号)
- e-Gov法令検索「有機溶剤中毒予防規則」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。
シンナーや塗料の吹き付けなど、有機溶剤の作業で直結式小型を選ぶときの例です。興研の「塗装マスクセット G-7-06型」は、直結式小型防毒マスク G-7-06型(国家検定合格 第TN382号)に、有機ガス用の吸収缶 KGC-10型と、防じん用のフィルター・押さえを組み合わせたセットです(販売ページの表示)。販売ページでは塗装作業向けのセットとされ、ほかの作業では合う吸収缶を別に用意するよう書かれています。ガスの種類と濃度(直結式小型は0.1%以下)、酸素濃度を確かめたうえで、顔に密着させて正しく使ってください。
吸収缶の交換時期は「使用時間」で決める
吸収缶は、破過すると見た目は同じままガスが通り抜けます。そこで、使う前に何時間まで使うか(使用限度時間)を決め、その時間で交換します。吸収缶には、破過曲線図(ガスの濃度と破過までの時間の関係を示したグラフ)と使用時間記録カードが添付されています。
濃度を確かめる。作業場所のガスの濃度、温度、湿度を確かめます。
破過曲線図で破過時間を読む。その濃度での破過時間を、吸収缶に添付の破過曲線図から読みます。物質がシクロヘキサンと違うときは、メーカーに問い合わせます。
余裕をもって使用限度時間を決める。読み取った時間より短く、余裕のある時間にします。温度や湿度が高いと、破過時間は短くなる傾向があります。
使った時間を記録する。使用時間記録カードに毎回記録し、限度時間を超えたら交換します。
異常を感じたらすぐ離れる。臭いや息苦しさを感じたら、作業をやめて避難し、保護具着用管理責任者などに報告します。
「臭いがしたら交換」は、正しい決め方ではありません。ガスによっては臭いを感じにくく、感じたときにはすでに吸っています。通達も、破過を知るために臭いに頼るのは適切でないとしています。
自社の実情に合わせて書き換えて使ってください。
一度使った吸収缶は、使用時間記録カードなどで除毒能力(ガスを取り除く力)が十分に残っていると確かめられるときだけ、もう一度使えます。メタノールや二硫化炭素などに使った吸収缶は、吸い取ったガスが少しずつ面体側に漏れ出すことがあるので、再使用しません。
- 防毒マスクの規格 第8条第3項(破過曲線図・使用時間記録カードの添付)
- 基発0525第3号 第3の2(1)(使用時間・記録・臭い・再使用)
- 同 告示 第8条(表示等・吸収缶の色)
- 厚生労働省「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(令和5年5月25日 基発0525第3号)
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

決めた使用限度時間で交換できるよう、交換用の吸収缶は前もって用意しておきます。興研の有機ガス用吸収缶 KGC-10型(C)は、G-7-06型などの直結式小型防毒マスクに付ける交換用の吸収缶(1個売り)で、販売ページに国家検定合格 第TN365号と表示されています。自分のマスクの型に合う吸収缶かを、販売ページと取扱説明書で確かめてください。
着け方・点検・保管の決まり
どんなによい吸収缶でも、面体と顔のすき間からガスが入れば効きません。正しく着けて、使う前に点検することが大切です。
- □ 吸気弁・面体・排気弁・しめひもに破損・亀裂・著しい変形がない
- □ 吸収缶が正しく取り付けられている
- □ 吸収缶に水が入っていない・穴あきや変形がない・異臭がしない
- □ 未使用の吸収缶は、メーカーの保存期限内で、包装が破れていない
- □ 着けるたびに、面体が顔に密着しているかを確かめた(取扱説明書の方法で)
吸収缶の活性炭は、湿気を吸ったり乾いたりすると力が落ちるので、使う直前まで開封しません。使ったあとは上と下の栓を閉めて、湿気の少ない清潔な場所に保管します。
推奨(指針・通達) 通達は、呼吸用保護具を使わせる事業場に、1年以内ごとに1回のフィットテスト(顔と面体の密着の程度を測る検査)を求めています。金属アーク溶接等作業の場所と、作業環境測定で第三管理区分になった場所では、告示で定める方法による実施が義務になっています。
義務 有害なガスを扱う業務などでは、会社は呼吸用保護具などを、同時に働く人の数以上備え、いつも使える清潔な状態にしておきます(安衛則 第593条・第596条)。働く人は、使うよう命じられたら使わなければなりません(第597条)。
化学物質の作業で、保護具の選び方と管理を任される人の決まりがわかる
- 基発0525第3号 第1の5(1)(フィットテスト)・第4(保守管理)
- 労働安全衛生規則 第593条・第596条・第597条
- 厚生労働省「防じんマスク、防毒マスク及び電動ファン付き呼吸用保護具の選択、使用等について」(令和5年5月25日 基発0525第3号)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。
よくある間違い
| 間違い | 正しくは |
|---|---|
| マンホールやタンクの中で、防毒マスクで作業する | 酸素が足りないおそれがある場所では使えない。空気呼吸器・送気マスクを使う |
| ガスの種類を確かめずに、手元の吸収缶を使う | 物質ごとに吸収缶を選ぶ。色と表示で種類を確かめる |
| 臭いがしてきたら吸収缶を交換する | 破過曲線図から使用限度時間を決め、時間で交換する |
| 塗装の作業に、防じん機能のない吸収缶を使う | 塗料の粒が混ざるので、防じん機能つき(白線入り)を使う |
| ほかのメーカーの吸収缶を、確かめずに面体につける | 取扱説明書で、使える組み合わせかを確かめる |
よくある質問
まとめ:ガスの種類で吸収缶、濃度で形、時間で交換
- 吸収缶は5種類。ハロゲンガス用は灰色と黒色、有機ガス用は黒、一酸化炭素用は赤、アンモニア用は緑、亜硫酸ガス用は黄赤です。
- 隔離式は2%以下、直結式は1%以下、直結式小型は0.1%以下で使います(アンモニアは別の値)。一酸化炭素用は隔離式だけです。
- 酸素が18%未満の場所や濃度がわからない場所では使えず、給気式のものを使います。
- 型式検定合格標章を確かめ、吸収缶と面体は使える組み合わせで使います。
- 交換は臭いではなく、破過曲線図から決めた使用限度時間で行い、使用時間を記録します。
つまり、ガスの種類・濃度・酸素を確かめてから選び、使った時間で交換することが、防毒マスクを正しく効かせるいちばんの近道です。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、職場の安全と健康のルールを図解しています。法令は厚生労働省の資料と条文で確認し、根拠を示して説明することを大切にしています。


