ヒヤリハット報告書の書き方|記入例とそのまま使える様式(テンプレート)

ヒヤリハット報告書の書き方を示す図解。報告書の用紙に記入する作業者のアイキャッチ 現場の安全活動
書き方の要点

ヒヤリハット報告書は、「いつ・どこで・どうしていた時に・何が起きかけたか」の事実と、作業環境・設備・作業方法のどこに問題があったか、どうすれば防げるかを短く書く書類です。反省文はいりません。法律で決まった様式はないので、労働局が示している例のように、記入できる範囲で書ける1枚の様式にします。

知りたいことから:そのまま使える様式/記入例/欄ごとの書き方のコツ

たとえば「梱包機で詰まった箱を直そうとして、カッターに指が近づいた」という出来事なら、上手な文章はいりません。場所・作業・起きかけたことと、「停止ボタンが遠い」といった問題点が書いてあれば、安全担当が対策を決められます。

根拠

情報の確認時点:2026年10月。

ヒヤリハット報告書の項目|何を書く欄があるか

ヒヤリハット報告書の項目は、出来事の事実・問題点・対策の3つのまとまりでできています。新潟労働局が示している様式の例では、次の欄があります。

左から、まとまり・様式の欄・その欄に書くことです。

まとまり欄書くこと
事実いつ・どこで・どうしていた時日時、場所、していた作業
事実あらまし何が起きかけたか(ヒヤリとした・危険を感じた内容)
問題点作業環境・設備機器・作業方法・自分自身不安全な状態や行動。わからなければ空欄でよい
問題点心身の状態(選ぶだけ)気がつかなかった、あわてていた、など当てはまるものに○
対策今後の対策「こうしてほしい」「こうしたほうがよい」
対策安全担当の記入欄報告者は書かない。担当者が対策を書く

報告の対象には、実際に起きたヒヤリハットのほかに、まだ起きていないが危ないと感じた「想定ヒヤリ」を含める方法もあります。報告書の上に「ヒヤリハット・想定ヒヤリ」のどちらかに○をつける欄を置くと、1枚の様式で両方を集められます。

POINT

法律で決まった様式はありません。自社の様式を作るときは、この6つの欄を基本にして、書く人の手間が1枚・数分で済む量に絞ります。

根拠

情報の確認時点:2026年10月。

ヒヤリハット報告書の3つのまとまりの図。事実はいつ・どこで・何が、問題点は環境・設備・方法、対策はこうしてほしい

記入例|架空の職場で全部の欄を埋めると

記入例は、どちらも架空の職場・架空の出来事です。報告者の欄と、安全担当の欄を分けて書いています。

記入例1:食品工場の包装ライン(はさまれかけた)

欄記入例
報告の種別ヒヤリハット
所属・氏名製造2課 山田太郎
いつ〇月〇日(火)10時20分ごろ
どこで/どうしていた時包装ライン3号機/流れてきた袋の詰まりを直していた
あらまし袋が搬送ベルトの出口で詰まったので、機械を動かしたまま手で引き抜こうとした。ベルトが急に動き、手袋の指先がローラーに引き込まれかけた。すぐに手を引いたのでけがはなかった
問題点:設備機器停止ボタンが作業位置から3mほど離れていて、すぐ押せない
問題点:作業方法詰まりを直すときに機械を止める手順が、現場で守られていない
心身の状態大丈夫だと思った/あわてていた
今後の対策詰まりが起きやすい出口の近くに停止ボタンを付けてほしい
安全担当の記入欄①出口に非常停止ボタンを増設する ②詰まり取りは「停止→確認→手を入れる」の手順を朝礼で再確認 ③出口のカバーを開けると止まるしくみ(インターロック)を安全衛生委員会で検討する
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記入例2:倉庫の通路(フォークリフトと出会い頭)

欄記入例
報告の種別ヒヤリハット
所属・氏名物流課 佐藤花子
いつ〇月〇日(木)15時ごろ
どこで/どうしていた時第2倉庫のB列の角/台車で部品を運んでいた
あらまし棚の角を曲がったところで、右からバックしてきたフォークリフトと1mほどの距離で出会い、両方が急停止した。接触はなかった
問題点:作業環境棚が高く、角の先が見えない。歩行者と車両の通路が分かれていない
問題点:作業方法フォークリフトのバック時に誘導者がいない
心身の状態よく見えなかった
今後の対策角にカーブミラーを付けてほしい。歩く通路を床の線で分けたほうがよい
安全担当の記入欄①B列の角にカーブミラーを設置 ②歩行者通路を床に表示 ③同じ倉庫の他の角も点検し、全員に周知
POINT

どちらの例も、あらましに「自分が悪かった」とは書いていません。事実と、設備や環境のどこが危なかったかが書いてあるので、安全担当が対策を決められます。

記入例のポイントの図。停止ボタンが遠いという問題点を書くと、出口に停止ボタンを付ける対策につながる

欄ごとの書き方のコツ

左が欄、右がその欄を書くときのコツです。

欄書き方のコツ
いつ・どこで時刻は「ごろ」でよい。場所は設備名や棚の番号まで書くと、あとで現場を確かめやすい
どうしていた時していた作業を1つだけ書く(「詰まりを直していた」「台車で運んでいた」)
あらまし起きた順に2〜3文。数字(距離・高さ・速さ)があると危なさが伝わる
問題点人の行動だけでなく、設備・環境・手順のどこが危なかったかを書く。わからなければ空欄でよい
今後の対策「気をつける」ではなく、設備や手順をどう変えたいかを書く。思いつかなければ空欄でよい

新潟労働局の資料では、報告書は「記入できる範囲でもよいので自由に作成」し、作成・提出は職長が代理してもかまわないとしています。書くのが苦手な人には、口で聞いて職長が書く方法もあります。

注意|ここで間違えやすい

ここで間違えやすいのですが、作業手順書どおりに作業しなかったことが原因でも、それだけで終わらせないことが大切です。労働局の資料でも「手順書に無理があって守ることができないのかもしれない」「手順書の見直しの良い機会」と説明されています。

原因を「人のせい」で終わらせない掘り下げ方は、品質の不良を調べるときと同じです。同じ筆者が運営する電気と品質管理のブログ shirasusolo.net のなぜなぜ分析が「人のせい」で終わる理由と対策で詳しく解説しています。

根拠

情報の確認時点:2026年10月。

よくある記入ミスと書き直し例

集まった報告書が対策につながらないときは、たいてい次のどれかです。Before を After のように書き直すと、安全担当が対策を決められる報告書になります。

左がよくあるミス、真ん中が書き直す前、右が書き直した後の例です。どれも架空です。

よくあるミスBeforeAfter
反省文になっている不注意でした。今後は気をつけます床が濡れていて、台車を押したまま足がすべった
場所があいまい工場で第1工場 プレス2号機の前
何が起きかけたか書いていない危なかった上の棚から段ボール箱が落ち、足元から30cmの所に落ちた
対策が「注意する」だけ周りをよく見る棚の上段は軽い物だけにし、落下防止のバーを付けてほしい

書き直してもらうときは、報告した人を責めずに「教えてくれてありがとう。もう少し場所を詳しく教えて」と聞き返します。報告書を突き返すと、次から報告が出なくなります。

ヒヤリハット報告書は気をつけますという反省文ではなく、床が濡れてすべったという事実を書くことを示す比較図

そのまま使える報告書の様式

労働局の様式の例を参考に、1枚で書ける量に絞ったひな形です。社内の書式に合わせて書き換えて使ってください。

ひな形|コピーして使えます
ヒヤリハット・想定ヒヤリ報告書
報告の種別: ヒヤリハット ・ 想定ヒヤリ (どちらかに○) 所属・氏名: いつ:  月  日( )  時  分ごろ どこで:         どうしていた時: あらまし(何が起きかけたか・危ないと感じたこと): どんな問題があったか(わからなければ空欄でよい)  作業環境:  設備・機器:  作業方法:  自分自身: 心身の状態(当てはまるものに○):  よく見え(聞こえ)なかった / 気がつかなかった / 知らなかった / 大丈夫だと思った / あわてていた / 疲れていた / やりにくかった もし災害になっていたら(当てはまるものに○):  休業するようなけが / 手当てで済むけが / けがはないが物が壊れた / わからない 今後の対策(こうしてほしい・こうしたほうがよい): ―――――――― ここから下は安全担当が記入 ―――――――― 確認日:   確認者: 対策: 全員への周知: 済( 月 日)

自社の実情に合わせて書き換えて使ってください。「もし災害になっていたら」の欄は、労働局の様式の例にはない欄です。○をつけるだけなので書く手間はほとんど増えず、安全担当が対策の順番を決める手がかりになります(ハインリッヒの法則の、重い災害・軽傷・けがのない事故の段と同じ考え方です)。

報告が集まる様式にするチェックリスト
  • □ 1枚・数分で書ける量になっている
  • □ 選ぶだけ(○をつけるだけ)の欄がある
  • □ 「もし災害になっていたらどのくらいか」を○で選べ、対策の順番の手がかりにしている
  • □ 問題点や対策は「わからなければ空欄でよい」と書いてある
  • □ 職長が代わりに書いてもよいことになっている
  • □ 安全担当の欄が分かれていて、報告者は書かなくてよい
  • □ 報告した人を責めないことを、様式か掲示で約束している
根拠

情報の確認時点:2026年10月。

提出したあとの流れ

報告書は、出して終わりではありません。安全担当がコメントを返し、関係者で対策を決め、全員に知らせるところまでつなげます。この流れと、報告が集まり続ける職場のコツは、ヒヤリハットとはの記事でまとめています。

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推奨 ヒヤリハットの報告書は、法律で提出が義務づけられた書類ではありません。ただし、集めたヒヤリハットは、職場の危険を見つけて対策するリスクアセスメント(労働安全衛生法第28条の2で事業者が行うよう努めるもの)の材料になります。

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記入例の題材に迷ったら、厚生労働省の職場のあんぜんサイトにあるイラスト付きのヒヤリ・ハット事例集も参考になります。

根拠

法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

よくある質問

Q. ヒヤリハット報告書には何を書けばいいですか?

A. いつ・どこで・どうしていた時に何が起きかけたかの事実と、問題点、対策の案を短く書きます。反省文はいりません。

Q. ヒヤリハット報告書は法律で義務づけられていますか?

A. 義務ではありません。決まった様式もないので、会社で書きやすい様式を作って使います。

Q. ヒヤリハット報告書の対策が思いつかないときは?

A. 空欄で出してかまいません。対策は安全担当や関係者で考えます。事実を書くことが大切です。

Q. ヒヤリハット報告書は本人が書かないといけませんか?

A. 本人でなくてもかまいません。労働局の様式例でも、職長が代理で作成・提出してよいとしています。

Q. 想定ヒヤリとは何ですか?

A. まだ起きていないが、作業していて危ないと感じたことです。ヒヤリハットと同じ様式で報告できます。

まとめ:事実と問題点を短く、反省文はいらない

POINT
  • ヒヤリハット報告書は、いつ・どこで・どうしていた時・あらまし・問題点・対策を書く書類です。
  • 問題点は、人の行動だけでなく作業環境・設備・作業方法のどこが危なかったかを書きます。
  • 法律で決まった様式はありません。1枚・数分で書ける様式にします。
  • わからない欄は空欄でよく、職長が代わりに書いてもかまいません。
  • 報告書は、安全担当のコメント→対策→全員への周知までつなげて活かします。

つまり、上手な文章より「次の人が同じ危険にあわないための事実」が書いてあることが大切です。報告してくれた人には、まず感謝を伝えましょう。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、職場の安全と健康のルールを図解しています。法令は厚生労働省の資料と条文で確認し、根拠を示して説明することを大切にしています。

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