- ヒヤリハットとは何か、正しい意味を知りたい
- 職場でどんなことがヒヤリハットにあたるのか、事例で確かめたい
- ヒヤリハットの活動を始めたが、報告が集まらない
- ヒヤリハットとは何か、労働災害との違い
- 職場でよくあるヒヤリハットの事例
- 集めたあとの活かし方と、活動を続けるコツ
ヒヤリハットとは、仕事をしていて、もう少しでけがをするところだった「ヒヤリ」「ハッ」とした出来事のことです。けがに至らなかったうちに集めて対策すれば、同じ原因の労働災害を防げます。報告した人を責めないこと、集めた内容を対策と共有につなげることが、活動を続けるコツです。
たとえば、「濡れた床で足がすべったが、手すりにつかまって転ばなかった」はヒヤリハットです。運がよかっただけで、条件が少し違えば大けがになっていた出来事を、「たまたま無事だった」で終わらせずに、職場の危険を見つける手がかりにします。
ヒヤリハットと労働災害の違い
この表の見方:「想定ヒヤリ」は、新潟労働局の資料で紹介されている考え方です。報告しやすくし、危険に気づく力を高めるねらいがあります。
| 想定ヒヤリ | ヒヤリハット | 労働災害 | |
|---|---|---|---|
| 起きたこと | まだ何も起きていないが、危ないと感じた | 危ない出来事が起きたが、けがはなかった | けがや病気になった |
| 例 | 「この通路は暗くてつまずきそう」 | 「段差でつまずいたが、転ばなかった」 | 「段差で転んで手首を骨折した」 |
| 使い方 | 起きる前に対策する | 同じ出来事が災害になる前に対策する | 原因を調べて再発を防ぐ |
1件の重い災害の陰には、多くの軽い災害やヒヤリハットがあると言われます(ハインリッヒの法則)。数の比率よりも、「ヒヤリハットのうちに手を打てば、重い災害の芽をつめる」という考え方が大切です。

職場でよくあるヒヤリハットの事例
この表の見方:どれも一般的な例です。自分の職場の作業に置きかえて考えてみましょう。
| 災害の型 | ヒヤリハットの例 |
|---|---|
| 転倒 | 濡れた床ですべった、コードに足を引っかけた、段差を踏み外しかけた |
| 墜落・転落 | 脚立の上でよろけた、トラックの荷台から足を踏み外しかけた |
| はさまれ・巻き込まれ | 機械を止めずに手を入れかけた、手袋がローラーに引き込まれかけた |
| 激突・飛来 | フォークリフトが死角から出てきた、棚の上から物が落ちてきた |
| 切れ・こすれ | カッターの刃が手の近くをかすめた |
| 交通 | 営業車で交差点に入るとき、自転車に気づくのが遅れた |
| 熱中症・化学物質 | 暑い倉庫で作業中にめまいがした、薬品が跳ねて顔の近くに飛んだ |
当てはめ例(集めたヒヤリハットから対策へ)
この表の見方:どれも架空の例です。
| 職場の例(架空) | 集まったヒヤリハット | 対策 |
|---|---|---|
| 食品工場 | 洗浄のあと床が濡れていて、すべった報告が月に5件 | 排水の位置を直し、すべりにくい靴を支給 |
| 倉庫 | 棚の角でフォークリフトと歩行者が鉢合わせ | カーブミラーと歩行者通路の線を設置 |
| 事務所 | キャスター付きの椅子に乗って高い所の物を取った | 踏み台を各フロアに置き、椅子に乗らないルールを周知 |

集めたあとの4ステップ
報告する。体験した人が、いつ・どこで・何をしていて・どうなりそうだったかを書いて出します。職長が代わりに書いてもかまいません。
担当者がコメントする。安全担当が内容を確かめ、コメントを返します。報告がむだにならなかったと伝わることが大切です。
対策を決める。関係者で、原因と具体的な対策(設備・手順・表示など)を決めます。
全員に知らせる。朝礼や掲示で、出来事と対策を全員に共有します。
集めたヒヤリハットは、職場の危険を洗い出して優先順位をつけるリスクアセスメントや、危険に気づく力をつける危険予知トレーニング(KYT)の題材にもなります。リスクアセスメントは、労働安全衛生法第28条の2で、事業者が行うよう努めるものとされています。
ヒヤリハットで見つけた危険に、優先順位をつけて対策する方法がわかる
- 新潟労働局「ヒヤリハット事例・想定ヒヤリ 報告制度の導入について(例)」
- 労働安全衛生法 第28条の2
- 新潟労働局「ヒヤリハット事例・想定ヒヤリ 報告制度の導入について(例)」
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

活動を続けるコツ
ヒヤリハットの報告は、本人にとって「自分の失敗を話す」ことです。報告した人を叱ったり、評価を下げたりすると、すぐに報告は集まらなくなります。「報告した人を責めない」を会社のルールとして決め、守ることがいちばん大切です。
- □ 報告した人を責めないことを、ルールとして決めて伝えている
- □ 報告のしかたをかんたんにしている(口頭・メモ・スマホでもよい)
- □ まだ起きていない「想定ヒヤリ」も歓迎している
- □ 報告には必ずコメントや対策を返している
- □ 対策の結果を朝礼や掲示で全員に知らせている
- □ 報告の数ではなく、対策の数で活動を評価している
推奨 ヒヤリハットの報告そのものは、法律の義務ではありません。ただし、職場の危険を見つける方法として、労働局も報告制度の導入を勧めています。
よくある質問
まとめ:運がよかっただけの出来事を、対策のきっかけに
- ヒヤリハットは、もう少しでけがをするところだった出来事です。
- けがに至らないうちに集めて対策すれば、同じ原因の労働災害を防げます。
- 報告→コメント→対策→全員に共有の流れで活かします。
- 報告した人を責めないことが、活動を続けるいちばんのコツです。
つまり、「たまたま無事だった」を職場の財産にし、報告してくれた人に感謝する文化をつくることが大切です。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、職場の安全と健康のルールを図解しています。法令は厚生労働省の資料と条文で確認し、根拠を示して説明することを大切にしています。


