- SDSとは何の書類なのか、なぜ必要なのかわからない
- 取引先からSDSを求められた/仕入れ先からSDSが届いたが、どう扱えばいいか知りたい
- SDSを職場でどう使えばいいのか知りたい
- SDSとは何か、誰が誰に渡すものか
- SDSに書かれていることと、もらい方
- 受け取った会社がやること(掲示・周知・リスクアセスメント)
SDS(安全データシート)は、化学物質の名前・成分・危なさ・扱い方・事故のときの応急措置などを、売る側(渡す側)が買う側に知らせる書類です。労働安全衛生法で決まった物質(通知対象物)を渡すときは、渡す時までにSDSで知らせることが義務で、受け取った会社は作業場に掲示するなどして働く人に知らせます。
SDSは Safety Data Sheet の略です。以前は MSDS と呼ばれていましたが、今は国際的にも SDS に統一されています。かんたんに言うと、化学物質の「取扱説明書」です。
- 労働安全衛生法 第57条の2(文書の交付等)・第101条第4項(周知)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。
SDSとは:化学物質の情報を、渡す側から受け取る側へ
SDSは、化学物質を作る・売る会社から、それを使う会社へ、そして実際に扱う働く人へと、情報をつないでいくための書類です。
メーカー・販売店が作る。通知対象物を売ったり渡したりするときに、SDSを作って相手に知らせます(法第57条の2)。
使う会社が受け取る。仕入れた製品ごとにSDSを受け取り、保管します。
働く人に知らせる。作業場の見やすい場所に掲示する、備え付けるなどして、扱う人がいつでも見られるようにします(法第101条第4項)。
家電の取扱説明書に似ています。買った人が安全に使えるよう、作った人が「危ない使い方」「困ったときの対処」を書いて渡します。SDSは、それを化学物質で、法律で決めたものです。
- 労働安全衛生法 第57条の2・第101条第4項
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

SDSが義務になる物質と、努力義務の物質
この表の見方:上ほど義務が強くなります。
| 区分 | 中身 | 義務の強さ |
|---|---|---|
| 通知対象物 | 労働安全衛生法施行令で決まった物質(対象は順に増えている) | 義務 |
| それ以外の危険・有害な物質 | 厚生労働大臣が定める特定危険有害化学物質等 | 努力義務 |
| 一般消費者向けの製品 | 家庭用の洗剤など、主に一般の人が使う製品として渡すもの | 対象外 |
通知対象物は、2025年4月以降も段階的に追加されています。自社が使っている物質が対象かどうかは、厚生労働省の職場のあんぜんサイトの「モデルSDS」などで調べられます。
「SDSが届かない=危なくない」とは限りません。対象外の物質でも、危険・有害なものは多くあります。届いていない製品は、仕入れ先に求めるようにしましょう。
- 労働安全衛生法 第57条の2第1項(ただし書:一般消費者向け製品)
- 労働安全衛生規則 第24条の15(努力義務の物質)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
- 厚生労働省 職場のあんぜんサイト「GHS対応モデルラベル・モデルSDS情報」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。
SDSに書かれていること
SDSは JIS Z 7253 に沿って16の項目で書かれるのが一般的です。法律では、少なくとも次の事項を知らせることになっています。
この表の見方:左が条文の言葉、右がやさしい言いかえです。16項目の読み方は、別の記事でくわしく扱います。
| 法律で決まった主な事項 | やさしく言うと |
|---|---|
| 名称、成分とその含有量 | 何という製品で、何がどれだけ入っているか |
| 物理的及び化学的性質 | 燃えやすさ、においの有無、沸点など |
| 人体に及ぼす作用 | 吸ったり触れたりしたときの体への害 |
| 貯蔵又は取扱い上の注意 | しまい方、使い方の注意 |
| 事故が発生した場合の応急の措置 | こぼした・浴びた・吸ったときの対処 |
| 危険性又は有害性の要約、想定される用途と使用上の注意、適用される法令など | ひと目でわかる危険のまとめ、使い道と注意、関係する法律 |
「人体に及ぼす作用」は、渡す側が5年以内ごとに最新の知見で見直すことになっています(規則第34条の2の5)。
- 労働安全衛生法 第57条の2第1項
- 労働安全衛生規則 第34条の2の4・第34条の2の5
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

SDSのもらい方:紙でなくてもよい
SDSは、紙で渡すほか、次の方法でもよいとされています(規則第34条の2の3)。
- CD・USBメモリなどの記録媒体を渡す
- FAX・電子メールで送る
- SDSが載っているホームページのアドレス(二次元コードでもよい)を伝えて、見てもらう
ただし、ホームページで知らせる場合も、受け取った会社が働く人に知らせる義務は変わりません。社内のパソコンや印刷した紙で、作業場の人がすぐに見られるようにしておきます。
当てはめ例
この表の見方:どれも架空の例です。
| 職場の例(架空) | やること |
|---|---|
| 塗装工場で、新しいシンナーを買った | 仕入れ先からSDSを受け取り、塗装場に置く。リスクアセスメントを行う |
| 仕入れ先から「SDSはホームページで」と言われた | URLを控えて社内で印刷・保存し、作業場で見られるようにする |
| 取引先に自社の接着剤を売ることになった | 通知対象物が含まれるなら、売る時までにSDSを渡す |
- 労働安全衛生規則 第34条の2の3(通知の方法)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。
受け取った会社がやること
- □ 使っている化学物質の製品ごとに、SDSがそろっている
- □ SDSを、扱う作業場の見やすい場所に掲示するか、備え付けている(電子でもすぐ見られる)
- □ 新しく使い始めた物質や、作業の方法を変えたときに、リスクアセスメントを行った
- □ リスクアセスメントの結果を記録し、働く人に知らせた
- □ SDSの改訂版が届いたら、古いものと差し替えた
SDSは、リスクアセスメント(化学物質の危なさを調べて対策を決めること)の出発点です。リスクアセスメント対象物を新しく使い始めるときや、作業の方法を変えるときに行い、結果を記録して働く人に知らせます(規則第34条の2の7・第34条の2の8)。
- 労働安全衛生法 第101条第4項
- 労働安全衛生規則 第34条の2の7・第34条の2の8
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

よくある質問
まとめ:SDSは化学物質の「取扱説明書」
- SDSは、化学物質の成分・危なさ・扱い方・応急措置を、渡す側が受け取る側に知らせる書類です。
- 通知対象物は、渡す時までにSDSで知らせることが義務です(法第57条の2)。
- 紙のほか、メールやホームページのアドレスで知らせてもかまいません。
- 受け取った会社は、作業場で働く人に知らせ、リスクアセスメントに使います。
つまり、化学物質を使う職場では、まず手元のSDSをそろえて作業場に置くことが、安全管理の第一歩です。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、職場の安全と健康のルールを図解しています。法令は厚生労働省の資料と条文で確認し、根拠を示して説明することを大切にしています。


