- 職場でけが人が出た。まず何をすればいいのかわからない
- 病院で健康保険を使っていいのか、会社はどこに何を報告するのか知りたい
- 休んでいる間の給料や、再発防止まで、やることを順番に知りたい
- 労災が起きたときの会社の対応(当日→数日以内→1か月以内)
- 報告・補償・記録の決まり
- コピーして使える対応チェックリスト
労災が起きたら、①けが人の救護と必要なら119番、②病院では健康保険を使わず労災と伝える、③現場と状況を記録する、④休業4日以上なら労働者死傷病報告を遅滞なく出す、⑤最初の3日分の休業補償と労災保険の請求を手伝う、⑥原因を調べて再発を防ぐ、の順に進めます。
けがの具合がわからないとき、意識がおかしいとき、大量に出血しているときは、ためらわず119番に通報してください。救護がすべてに優先します。
「労災(労働災害)」は、仕事が原因のけがや病気のことです。かんたんに言うと、会社は「助ける・記録する・報告する・補償する・繰り返さない」の5つを順番に行います。
- 労働安全衛生規則 第97条(労働者死傷病報告)
- 労働基準法 第75条・第76条(療養補償・休業補償)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
- e-Gov法令検索「労働基準法」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。
当日にやること
救護する。けが人を安全な場所に移し、応急手当をします。必要なら119番。二次災害(機械がまだ動いている、ガスが漏れているなど)を防ぐため、機械を止めます。
病院に「労災」と伝える。仕事のけがには健康保険は使えません(健康保険法第1条)。受付で労災であることを伝えます。労災保険の指定医療機関なら、窓口での支払いなしで治療を受けられます。
現場と状況を記録する。いつ・どこで・何の作業中に・どうなったかを、写真やメモで残します。見ていた人の話も聞いておきます。
上司と担当者に連絡する。安全衛生の担当者や総務に連絡し、家族への連絡も行います。
「健康保険で治療してもらえばいい」は間違いです。あとから労災に切り替える手続きが必要になり、けがをした人にも手間がかかります。最初から労災として扱いましょう。
記録しておく項目
この表の見方:どれも架空の例です。あとで労働者死傷病報告や労災保険の請求に、この記録を使います。
| 項目 | 例 |
|---|---|
| 日時と場所 | 10月20日 午前10時ごろ、第2倉庫の出荷場 |
| 作業の内容 | 手で段ボール箱(約15キログラム)を棚から下ろしていた |
| 何が起きたか | 箱が手から滑り、右足の甲に落ちた |
| けがの部位と状態 | 右足の甲の打撲。病院で骨折と診断 |
| 見ていた人と状況 | 同じ班の2人。床に段ボールの破片があり、足元が滑りやすかった |
- 健康保険法 第1条(業務災害は健康保険の対象外)
- e-Gov法令検索「健康保険法」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

数日以内にやること:報告と補償
この表の見方:休業がない(その日のうちに仕事に戻った)けがは、死傷病報告の対象外です。記録は残しておきましょう。
| 手続き | 中身 | 期限 |
|---|---|---|
| 労働者死傷病報告(休業4日以上・死亡) | 所轄の労働基準監督署に、電子申請で報告する | 遅滞なく(事情が許すかぎり早く) |
| 労働者死傷病報告(休業1〜3日) | 3か月分をまとめて報告する | 1〜3月分は4月末まで、など |
| 最初の3日分の休業補償 | 平均賃金の60%を会社が払う(業務災害の場合) | 給料の支払いにあわせて |
| 労災保険の請求の手伝い | 療養・休業の請求書の事業主証明を書く | けがをした人が請求するときに |
待期3日の扱いと、休業補償の金額の計算例がわかる
けが人がいなくても、火災・爆発、クレーンの倒壊、ボイラーの破裂など、決められた事故が起きたときは「事故報告」を監督署に出します(規則第96条)。
義務(罰則あり) 労災を報告しない、うその報告をする(いわゆる「労災隠し」)と、労働安全衛生法第100条の違反として、第120条により50万円以下の罰金の対象になります。
- 労働安全衛生規則 第96条・第97条
- 労働基準法 第76条・第84条
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
- e-Gov法令検索「労働基準法」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

1か月以内にやること:再発防止
原因を調べる。人・設備・作業方法・管理の4つの面から、なぜ起きたかを調べます。「本人の不注意」で終わらせません。
対策を決める。危険をなくす、設備で守る、ルールと教育、保護具の順に考えます。
職場に知らせる。何が起きて、何を変えたかを、朝礼や安全衛生委員会で共有します。
ほかの職場も確かめる。同じ危険がほかの場所にないかを確かめます。
休業している間とその後30日間は、そのけがをした人を解雇してはいけません(労働基準法第19条)。職場に戻るときは、けがの具合にあわせて作業を調整しましょう。
自社の実情に合わせて書き換えて使ってください。

よくある質問
まとめ:助ける・記録する・報告する・補償する・繰り返さない
- 当日は救護と119番、病院では労災と伝え、現場と状況を記録します。
- 休業4日以上は労働者死傷病報告を遅滞なく、1〜3日は3か月ごとに出します。
- 最初の3日分は会社が休業補償し、4日目からは労災保険の請求を手伝います。
- 原因を調べて対策を決め、職場で共有します。
つまり、このチェックリストを事務所に1枚置いておけば、もしものときにも順番どおりに動けます。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、職場の安全と健康のルールを図解しています。法令は厚生労働省の資料と条文で確認し、根拠を示して説明することを大切にしています。


