- 新しい機械を入れたら「特別教育が必要」と言われたが、何のことかわからない
- うちの職場で、どの作業に特別教育がいるのか一覧で知りたい
- 時間や記録の決まり、技能講習との違いを確かめたい
- 特別教育とは何か、誰が行うのか
- 対象になる業務の一覧(種類別)
- 記録の残し方と、自分の職場で必要なものの探し方
特別教育は、危険・有害な業務に労働者を就かせるときに、会社が行わなければならない安全衛生教育です(労働安全衛生法第59条第3項)。対象の業務は労働安全衛生規則第36条に50種類以上決まっていて、行ったら記録を3年間保存します(規則第38条)。
かんたんに言うと、「危ない作業を任せる前に、やり方と危険を会社が教えておく」決まりです。国家試験のような資格ではなく、会社が自分で行うこともできますし、外部の講習機関に頼むこともできます。
- 労働安全衛生法 第59条第3項(特別の教育)
- 労働安全衛生規則 第36条(対象業務)・第38条(記録の保存)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。
特別教育とは:資格ではなく、会社が行う教育
危険な業務に必要な資格は、危険の大きさで3段階に分かれています。特別教育は、その中でいちばん身近な段階です。
この表の見方:上ほど危険が大きく、求められる資格が重くなります。
| 段階 | だれが行う | 例 |
|---|---|---|
| 免許 | 国(都道府県労働局長)が試験をして与える | クレーン(5トン以上)、衛生管理者 |
| 技能講習 | 登録を受けた講習機関が行い、修了証を出す | フォークリフト(1トン以上)、玉掛け(1トン以上) |
| 特別教育 | 会社(事業者)が行う。外部に頼んでもよい | フォークリフト(1トン未満)、低圧電気、フルハーネス |
同じ機械でも、大きさで段階が変わることがあります。たとえばフォークリフトは、最大荷重1トン以上なら技能講習、1トン未満なら特別教育です。
1トン以上のフォークリフトに必要な技能講習の時間と費用がわかる
- 労働安全衛生法 第59条第3項・第61条(就業制限)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

特別教育が必要な業務の一覧(労働安全衛生規則第36条)
第36条の号を、職場でわかりやすいように7つの種類に分けました。各号の文は要約です。正確な範囲は条文で確かめてください。
1. 機械の取扱い
この表の見方:左の数字は第36条の号の番号です。
| 号 | 業務の内容(要約) |
|---|---|
| 1 | 研削といしの取替え・取替え時の試運転 |
| 2 | 動力プレスの金型・シャーの刃部・安全装置などの取付け・調整 |
| 31・32 | 産業用ロボットの教示、可動範囲内での検査・修理・調整 |
| 33 | 自動車用タイヤの組立てで、空気圧縮機で空気を充てんする |
| 14 | 小型ボイラーの取扱い |
2. 運転・荷役(小さめの車両や設備)
この表の見方:技能講習や免許より小さいもの・軽いものが特別教育になります。
| 号 | 業務の内容(要約) |
|---|---|
| 5・5の2・5の3 | 最大荷重1トン未満のフォークリフト・ショベルローダー、最大積載量1トン未満の不整地運搬車の運転(構内) |
| 5の4 | テールゲートリフターの操作(荷の積み卸しを伴うもの) |
| 9 | 機体重量3トン未満の車両系建設機械(整地・掘削など)の運転 |
| 10の5 | 作業床の高さ10メートル未満の高所作業車の運転 |
| 15〜17 | つり上げ荷重5トン未満のクレーン、1トン未満の移動式クレーン、5トン未満のデリックの運転 |
| 19 | つり上げ荷重1トン未満のクレーンなどの玉掛け |
| 11・18・20 | 巻上げ機の運転、建設用リフトの運転、ゴンドラの操作 |
3. 電気
この表の見方:電気の業務は、電圧の大きさで区分されています。
| 号 | 業務の内容(要約) |
|---|---|
| 4 | 高圧・特別高圧の充電電路と支持物の敷設・点検・修理・操作、低圧の充電電路の敷設・修理、区画された場所での充電部分が露出した低圧の開閉器の操作(高圧特別高圧電気取扱業務・低圧電気取扱業務) |
| 4の2 | 対地電圧50ボルトを超える蓄電池を内蔵する自動車の整備 |
| 3 | アーク溶接機を用いる金属の溶接・溶断 |
4. 高い所の作業
この表の見方:高さ2メートル以上で作業床を設けるのが難しい場所の作業が中心です。
| 号 | 業務の内容(要約) |
|---|---|
| 39 | 足場の組立て・解体・変更(地上の補助作業を除く) |
| 40 | ロープ高所作業 |
| 41 | フルハーネス型の墜落制止用器具を用いて行う作業 |
フルハーネスが必要な高さと、旧規格品の見分け方がわかる
5. 化学物質・粉じん・酸欠
この表の見方:有害なものを吸い込んだり触れたりするおそれのある業務です。
| 号 | 業務の内容(要約) |
|---|---|
| 26 | 酸素欠乏危険場所での作業 |
| 27 | 特殊化学設備の取扱い・整備・修理 |
| 29 | 特定粉じん作業 |
| 37 | 石綿(アスベスト)を扱う解体などの作業 |
| 34〜36 | 廃棄物焼却施設でのばいじんの取扱い、設備の保守点検・解体 |
| 25 | 四アルキル鉛等業務 |
6. 林業・建設
この表の見方:屋外の現場に多い業務です。
| 号 | 業務の内容(要約) |
|---|---|
| 8 | チェーンソーを用いる伐木・造材 |
| 6の2〜7の2 | 伐木等機械・走行集材機械・機械集材装置などの運転 |
| 9の2〜10の4 | くい打機などの作業装置の操作、ボーリングマシン、ジャッキ式つり上げ機械 |
| 30 | ずい道(トンネル)内の掘削・運搬・覆工などの作業 |
7. 高い気圧・放射線
この表の見方:限られた職場の業務です。
| 号 | 業務の内容(要約) |
|---|---|
| 20の2〜24の2 | 高圧室内作業、送気の調節、再圧室の操作など |
| 28〜28の5 | エックス線装置などの取扱い、原子力施設・除染などの業務 |
| 38 | 除染等業務・特定線量下業務 |
- 労働安全衛生規則 第36条(第1号〜第41号)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

自分の職場で必要な特別教育の探し方
いいえ → 特別教育は不要。ただし雇入れ時の教育などは全員に必要
いいえ → 特別教育ではなく、技能講習か免許が必要
当てはめ例
この表の見方:どれも架空の例です。実際の作業内容を条文と照らして判断します。
| 職場の例(架空) | 必要な特別教育 |
|---|---|
| 倉庫で0.9トンのフォークリフトを使い、トラックのテールゲートリフターで荷を降ろす | 1トン未満のフォークリフト運転(5号)、テールゲートリフターの操作(5の4号) |
| 工場でグラインダーの砥石を交換し、溶接もする | 研削といしの取替え(1号)、アーク溶接(3号) |
| 工場の配電盤室で、充電部分がむき出しの開閉器を操作する。電気を止めずに、200ボルトの配線をつなぎ直す | 低圧電気取扱業務(4号)。条文の対象は、低圧の充電電路の「敷設・修理」と、配電盤室・変電室など区画された場所で「充電部分が露出している開閉器の操作」です(e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」第36条第4号) |
時間・記録・省略の決まり
| 決まり | 中身 | 根拠 |
|---|---|---|
| 時間と科目 | 業務ごとに、学科と実技の科目と時間が決まっている | 規則第39条・安全衛生特別教育規程 |
| 記録 | 受講者・科目などの記録を作り、3年間保存する | 規則第38条 |
| 省略 | 十分な知識と技能がある人は、その科目を省略できる | 規則第37条 |
義務(罰則あり) 特別教育をしないまま業務に就かせると、労働安全衛生法第59条第3項の違反として、第119条により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。第122条(両罰規定)で会社にも罰金が科されます。
自社の実情に合わせて書き換えて使ってください。
- 労働安全衛生規則 第37条〜第39条
- 労働安全衛生法 第119条・第122条
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

よくある質問
まとめ:一覧で探して、行ったら3年保存
- 特別教育は、危険・有害な業務に就かせる前に会社が行う安全衛生教育です(法第59条第3項)。
- 対象は規則第36条の50種類以上の業務。機械・運転・電気・高所・化学など幅広くあります。
- 同じ機械でも、大きいものは技能講習や免許になります。
- 記録を作って3年間保存します。行わないと罰則があります。
つまり、新しい作業や機械を入れるときは、まずこの一覧で特別教育が必要かを確かめ、必要なら作業の前に教育して記録を残す、という流れです。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、職場の安全と健康のルールを図解しています。法令は厚生労働省の資料と条文で確認し、根拠を示して説明することを大切にしています。


