ハインリッヒの法則とは|1:29:300の意味とヒヤリハット・バードの法則

ハインリッヒの法則を示す図解。1・29・300のピラミッドを指さす作業者のアイキャッチ 現場の安全活動
1:29:300

重い災害1件の陰に、軽傷が29件、けがのない事故が300件ある、という経験則の比率です。

答え

ハインリッヒの法則とは、同じ人が起こした330件の災害のうち、1件が重い災害、29件が軽傷、300件がけがのない事故になるという経験則です。アメリカの損害保険会社の安全技師ハインリッヒが発表しました。大切なのは比率の数字ではなく、重い災害の陰に多くのヒヤリハットや不安全な行動・状態があるので、そこで手を打てば重い災害を防げるという考え方です。

先に読む所:ヒヤリハットとの関係/バードの法則との違い/朝礼でそのまま使える説明例

たとえば「通路の角でフォークリフトと出会い頭にハッとした」という出来事は、運が悪ければ接触してけがをし、もっと悪ければ重い災害になります。原因は同じ「見通しの悪い角」です。ハインリッヒの法則は、この「まだけががないうちに原因をつぶす」ことの大切さを、数で示したものです。

根拠

情報の確認時点:2026年10月。

ハインリッヒの法則とは|1:29:300の意味

ハインリッヒの法則は、事故の重さごとの件数が1:29:300の割合になるという経験則です。重い順に積み上げると、上が細く下が広いピラミッドの形になります。

左から、件数・厚生労働省の職場のあんぜんサイトの言葉・やさしい言いかえです。

件数職場のあんぜんサイトの説明かんたんに言うと
1重い災害(死亡や手足の切断などの大事故だけではない)休業するようなけが
29軽傷(応急手当だけですむかすり傷)ばんそうこうで済むけが
300傷害のない事故(傷害や物損の可能性があるもの)けがはなかったヒヤリハット

さらにハインリッヒは、300件のけがのない事故の背後には、数千の不安全な行動や不安全な状態があることも指摘しています。不安全な行動は「保護具をつけない」「機械を止めずに手を入れる」など人の行動、不安全な状態は「安全カバーが外れている」「床が濡れている」など設備や環境のことです。

注意|ここで間違えやすい

ここで間違えやすいのですが、「1」は死亡事故だけを指すのではありません。職場のあんぜんサイトでも「死亡や手足の切断等の大事故のみではない」と説明されています。

根拠

情報の確認時点:2026年10月。

ハインリッヒの法則の1:29:300のピラミッドの図。1は重い災害、29は軽傷、300はけがのない事故、その下に不安全な行動・状態

ヒヤリハットとの関係:同じ原因から、ヒヤリにも重い災害にもなる

3つの段は、別々の原因で起きるのではありません。同じ原因から、運しだいでヒヤリハットにも、軽傷にも、重い災害にもなります。架空の倉庫で当てはめてみます。

どの段も、原因は「見通しの悪い角」と「歩行者と車両の通路が分かれていない」ことです。

段倉庫の例(架空):見通しの悪い通路の角
300(けがのない事故)角でフォークリフトと歩行者が出会い頭になり、ハッとして止まった
29(軽傷)台車とフォークリフトが接触し、手をすりむいた
1(重い災害)歩行者がフォークリフトにひかれ、足を骨折した

ヒヤリハットの段階で、カーブミラーをつける、歩行者通路を線で分ける、といった対策をすれば、軽傷も重い災害もまとめて防げます。これがハインリッヒの法則のいちばんの教えです。

たとえると

サイコロを振り続けているようなものです。ほとんどは「ヒヤリ」の目が出ますが、振り続ければいつか「重い災害」の目が出ます。サイコロを振る回数、つまり危ない状態そのものを減らすのが対策です。

ヒヤリハットそのものの意味や、職場でよくある事例は、次の記事でまとめています。

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見通しの悪い角という同じ原因から、出会い頭のヒヤリ、手をすりむく軽傷、ひかれて骨折する重い災害が生まれることを示す図

バードの法則(1:10:30:600)との違い

バードの法則は、ハインリッヒの法則に「物が壊れただけの事故」の段を加えた分析です。1969年に、フランク・バード(Frank E. Bird Jr.)が、297社の約175万件の事故報告を分析して発表しました。

2つの法則の違いを、比率・段の分け方・もとになったデータで比べた表です。

比べる点ハインリッヒの法則バードの法則
比率1:29:3001:10:30:600
段の分け方重い災害/軽傷/けがのない事故重傷または廃失/傷害/物損のみ/傷害も物損もない事故
もとになった数同じ人が起こした330件の災害297社の約175万件の事故報告
共通する教え重い災害の陰に、たくさんの小さな出来事がある同じ(630件のヒヤリ・ハットを含む事故の原因をつかむ)

バードの法則で「物損のみ」の段が加わったのは、けががなくても、機械や製品が壊れた事故は、けがの事故と同じ原因から起きることがあるからです。職場でヒヤリハットを集めるときも、「物を落とした」「設備にぶつけた」といった出来事を報告に含めると、原因の手がかりが増えます。

根拠

情報の確認時点:2026年10月。

ハインリッヒの法則の1:29:300と、物損のみの段を加えたバードの法則の1:10:30:600を比べた図

もう1つの教え「ドミノ理論」

ドミノ理論は、ハインリッヒが1931年の著書『Industrial Accident Prevention』で示した考え方です。災害は、いくつかの要因がドミノ倒しのように順番に倒れて起きるので、途中の1枚を抜けば止まると説明しました。

STEP 1

社会的な環境・生まれ育ち。人の考え方や習慣をつくる背景です。

STEP 2

人の欠点。不注意、知識や技能の不足などです。

STEP 3

不安全な行動・不安全な状態。保護具をつけない、安全カバーが外れているなどです。ハインリッヒが最も重く見た1枚です。

STEP 4

事故。はさまれる、落ちる、ぶつかるなどの出来事です。

STEP 5

けが(災害)。事故の結果として、人がけがをすることです。

3枚目の「不安全な行動・不安全な状態」を取り除けば、前のドミノが倒れても、事故とけがには届きません。ヒヤリハットは、この3枚目が表に出てきたものと考えられます。

注意|ここで間違えやすい

ドミノ理論は「人の不注意が原因」と読まれがちですが、3枚目には設備や環境の「不安全な状態」も入っています。今の安全管理では、人に注意を求めるだけでなく、設備や仕組みで危ない状態をなくすことを優先します。

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ハインリッヒのドミノ理論の図。5枚のドミノのうち3枚目の不安全な行動・状態を抜くと、事故とけがのドミノは倒れない

よくある誤解と正しい考え方

ハインリッヒの法則は有名なぶん、数字がひとり歩きしがちです。職場のあんぜんサイトでも「比率の数字そのものではなく、事故と災害の関係を示す法則」として活用するよう説明されています。

左がよくある誤解、右が正しい考え方です。

よくある誤解正しい考え方
どの職場でも必ず1:29:300になるハインリッヒ自身が「鉄骨の組立と事務員では異なる」と言っている。比率は目安
ヒヤリの件数を減らせば、重い災害も同じ割合で減る件数の多い小さなヒヤリと、重い災害の原因が違うこともある。墜落・はさまれ・感電など重い災害につながる危険は、件数と別に重点的に管理する
報告が少ないほど安全な職場だ報告が出ていないだけのことも多い。報告が多いのは危険に気づける職場のしるし
300件のヒヤリを集めれば、自然に事故は減る原因を調べて対策し、全員に知らせるところまで回して初めて効果が出る
事故の原因は、結局は本人の不注意不安全な状態(設備・環境)も同じくらい大事。人を責めると報告が集まらなくなる

最後の誤解は、品質の不良を調べるときにも同じことが起きます。原因を「人のせい」で終わらせない掘り下げ方は、同じ筆者が運営する電気と品質管理のブログ shirasusolo.net のなぜなぜ分析が「人のせい」で終わる理由と対策と、ヒューマンエラーの種類と仕組みで防ぐ対策で詳しく解説しています。

根拠

情報の確認時点:2026年10月。

職場での活かし方|朝礼でそのまま使える説明例

ハインリッヒの法則は、ヒヤリハットの報告やリスクアセスメントを始めるときに「なぜ小さな出来事を集めるのか」を説明する材料になります。法則を職場で使うときは、次の3つを押さえます。

ハインリッヒの法則を職場で使うチェックリスト
  • □ 比率の数字ではなく「重い災害の陰に小さな出来事がある」という考え方として伝えている
  • □ けがのない出来事(物損・ヒヤリハット)も報告してよいと伝えている
  • □ 報告した人を責めないことを、ルールとして決めている
  • □ 集めた出来事から対策を決め、結果を全員に知らせている
  • □ 重い災害につながる危険(墜落・はさまれ・感電など)は、件数と別に重点管理している
ひな形|コピーして使えます
朝礼で話す説明例(1分)
おはようございます。今日はハインリッヒの法則の話をします。 アメリカの安全技師ハインリッヒは、1件の重い災害の陰に、29件の軽いけがと、300件のけがのない事故がある、と示しました。 大事なのは数字ではありません。「重い災害は、ある日突然起きるのではなく、その前にたくさんの小さな出来事がある」ということです。 私たちの職場でも、[例:通路の角でフォークリフトとぶつかりそうになった]ということがありました。けががなかったのは運がよかっただけです。 「ヒヤリとした」「物を落とした」ことがあったら、小さなことでも教えてください。報告した人を責めることはしません。みんなで対策を決めて、結果をお知らせします。 今日も一日、ご安全に。

自社の実情に合わせて書き換えて使ってください。

集めたヒヤリハットから危険の大きさを見積もり、優先順位をつけて対策するのが、リスクアセスメントです。

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ヒヤリハットで見つけた危険に、優先順位をつけて対策する方法がわかる

推奨 ヒヤリハットの報告制度は法律の義務ではありませんが、労働局も導入を勧めています。厚生労働省の職場のあんぜんサイトには、イラスト付きのヒヤリ・ハット事例集があり、朝礼の題材に使えます。

根拠

情報の確認時点:2026年10月。

よくある質問

Q. ハインリッヒの法則とは何ですか?

A. 1件の重い災害の陰に29件の軽傷と300件のけがのない事故がある、という労働災害の経験則です。

Q. ハインリッヒの法則の1:29:300の300は何ですか?

A. けがのない事故の件数です。けがや物損になりかけた出来事で、ヒヤリハットにあたります。

Q. ハインリッヒの法則は誰が発表しましたか?

A. アメリカの損害保険会社の安全技師ハインリッヒです。1931年の著書で広く知られるようになりました。

Q. バードの法則との違いは何ですか?

A. バードの法則は物損のみの事故を加えた1:10:30:600で、1969年に約175万件の分析から示されました。

Q. ハインリッヒの法則の比率はどの職場でも同じですか?

A. 同じではありません。ハインリッヒ自身も作業で比率は異なると述べています。考え方として使います。

まとめ:数字より「小さな出来事のうちに手を打つ」考え方

POINT
  • ハインリッヒの法則は、330件の災害のうち1件が重い災害、29件が軽傷、300件がけがのない事故という経験則です。
  • 300件の背後には、数千の不安全な行動・不安全な状態があります。
  • バードの法則は物損のみの事故を加えた1:10:30:600です。
  • ドミノ理論では、不安全な行動・状態の1枚を抜けば事故とけがに届きません。
  • 比率は目安です。重い災害につながる危険は件数と別に重点管理します。

つまり、けがのない出来事を「運がよかった」で終わらせず、報告してくれた人に感謝して対策につなげることが、法則のいちばんの使い方です。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、職場の安全と健康のルールを図解しています。法令は厚生労働省の資料と条文で確認し、根拠を示して説明することを大切にしています。

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