化学物質の自律的管理とは|何が変わったか・会社がやる5つのこと

化学物質の自律的管理とは何かを示す図解。化学物質を自分で調べる担当者を描いたアイキャッチ 化学物質
お悩み
こんなふうに思っていませんか?
  • 化学物質の自律的管理と言われても、何が変わったのかよくわからない
  • うちの会社は塗料や洗浄剤を使うだけだが、関係あるのか知りたい
  • 結局、何をすればいいのかを一覧で知りたい
この記事でわかること
  • 自律的管理とは何か、これまでとの違い
  • 会社がやる5つのこと
  • 対象物質が増えていく予定と、準備のチェックリスト
結論|まず30秒でわかる答え

化学物質の自律的管理とは、国が物質ごとに細かい措置を決めるやり方から、会社が自分でリスクアセスメントを行い、対策を選んで実施するやり方への切りかえです。2022年(令和4年)の法令改正で始まり、ラベル・SDS・リスクアセスメントの対象物質が順に約2,900物質まで増え、化学物質管理者の選任や記録の保存が義務になりました。

「自律的」は「自分で決めて、自分で守る」という意味です。かんたんに言うと、国が「この物質はこの設備で」と決めていたのを、「危なさを調べて、自分の職場に合う方法を選んでください。ただし結果には責任を持ってください」に変えたものです。

根拠

法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

これまでとこれからの違い

これまで

  • 有機溶剤・特定化学物質など、決まった物質だけに細かい決まり
  • 対策の方法は国が決める(設備・測定・健診など)
  • ラベル・SDS・リスクアセスメントの義務は674物質

これから(自律的管理)

  • 危険・有害性がわかった物質は順に対象に(約2,900物質まで)
  • 対策の方法は会社が選ぶ(換気・代替・作業方法・保護具など)
  • 選んだ結果を記録し、働く人の意見も聴く

有機溶剤中毒予防規則などの、これまでの細かい決まりがなくなるわけではありません。その外側にある数多くの物質を、会社の自律的な管理で守る、という二段構えになります。

たとえると

料理のレシピにたとえると、これまでは「この材料はこの手順で」と国のレシピが決まっていました。これからは、材料の性質を自分で調べて、安全な手順を自分で組み立てるやり方が中心になります。

根拠

法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

化学物質の管理のこれまでとこれからの違いの図。国が決めるやり方から、会社が調べて選ぶやり方へ

会社がやる5つのこと

この表の見方:上から順に進めると、自律的管理の流れになります。

やること中身強さ
1. 情報を集めて伝えるラベル・SDSで危険性を確かめる。別の容器に移して保管するときも中身の情報を伝える義務
2. リスクアセスメント対象物を新しく使うとき、作業の方法を変えるときに危なさを調べる義務
3. ばく露を減らす吸ったり触れたりする量を最小限にする。濃度基準値がある物質は基準値以下にする義務
4. 体制をつくる化学物質管理者を選任する。保護具を使わせるなら保護具着用管理責任者も選任する義務
5. 記録して聴く結果と対策を記録して保存し、働く人に知らせ、意見を聴く機会を設ける義務
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自律的管理の中心になる担当者の選び方と講習がわかる

ほかにも、雇い入れたときの化学物質の安全衛生教育が全業種で必要になったこと、皮膚から吸収されたり皮膚を傷めたりする物質には保護めがね・手袋などを使わせることが求められています。

根拠

法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

化学物質の自律的管理で会社がやる5つのことの図。情報、リスクアセスメント、ばく露を減らす、体制、記録

対象物質は段階的に増えている

この表の見方:厚生労働省の資料による追加の順番です。物質の数は資料によって数え方が違うため、ここでは区分だけを示しました。2027年4月以降も追加が続きます。

施行追加される物質
2024年4月発がん性・急性毒性などが特に強い物質(区分1)
2025年4月そのほかの区分1の物質
2026年4月区分2以下や、燃えやすさなどの危険性がある物質

この結果、国がGHS分類(化学品の危険性・有害性を国際的なルールで分けたもの)で危ないとした物質は、すべてラベル・SDS・リスクアセスメントの義務の対象になっていきます。

注意|ここで間違えやすい

「昔から使っている塗料だから大丈夫」と思っていても、中の成分が新たに対象に加わっていることがあります。SDSの改訂版が届いたら、対象物が含まれていないか確かめましょう。

根拠

法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

化学物質の自律的管理で、ラベル・SDS・リスクアセスメントの対象物質が2024年から段階的に増える年表

当てはめ例と、準備のチェックリスト

たとえば、社員20人の金属部品工場で、脱脂用の洗浄剤と塗料を使っている場合を考えます(架空の例)。

STEP 1

SDSを集める。洗浄剤と塗料のSDSを仕入れ先から取り寄せ、対象物が入っているかを確かめます。

STEP 2

化学物質管理者を決める。人数に関係なく必要です。工場長や品質担当など、化学物質に詳しい人を選びます。

STEP 3

リスクアセスメントをする。どの作業で、どれくらい吸ったり触れたりするかを調べます。厚生労働省の簡易ツール(CREATE-SIMPLE)も使えます。

STEP 4

対策を選ぶ。換気を強める、洗浄剤を危険性の低いものに替える、手袋とマスクを使うなどから選びます。

STEP 5

記録して聴く。結果と対策を記録して保存し、作業する人に知らせて意見を聴きます。

自律的管理の準備チェックリスト
  • □ 使っている化学物質の製品ごとにSDSがそろっている
  • □ 化学物質管理者を選任し、氏名を掲示した
  • □ リスクアセスメントを行い、結果と対策を記録した
  • □ 濃度基準値がある物質は、基準値以下か確かめた
  • □ 別容器に移した化学物質にも、名前と危険性の表示をした
  • □ 雇い入れた人に化学物質の安全衛生教育をした

よくある質問

Q. 化学物質の自律的管理とは何ですか?

A. 会社が自分でリスクアセスメントを行い、職場に合う対策を選んで実施し、記録する化学物質の管理のやり方です。

Q. 自律的管理はいつから始まりましたか?

A. 2022年5月公布の法令改正で始まり、2023年4月と2024年4月に段階的に施行されました。対象物質の追加は今も続いています。

Q. 小さな会社も自律的管理の対象ですか?

A. 対象です。リスクアセスメント対象物を製造・取り扱う事業場は、規模に関係なく化学物質管理者の選任などが必要です。

Q. 有機則や特化則はなくなりますか?

A. なくなりません。これまでの細かい決まりはそのまま残り、その外側の多くの物質を自律的管理で守る二段構えです。

Q. 自律的管理で最初にやることは?

A. 使っている化学物質のSDSを集め、対象物が含まれているかを確かめることです。そのうえで化学物質管理者を選びます。

まとめ:調べて、選んで、記録する

POINT
  • 化学物質の自律的管理は、会社が自分で危なさを調べ、対策を選ぶやり方への切りかえです。
  • 対象物質は約2,900物質まで段階的に増えています。
  • 情報の伝達、リスクアセスメント、ばく露の低減、体制づくり、記録と意見聴取の5つが会社の仕事です。
  • これまでの有機則・特化則などの決まりは残ります。

つまり、まず手元のSDSをそろえ、化学物質管理者を決めて、リスクアセスメントから始めれば、自律的管理の形になります。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、職場の安全と健康のルールを図解しています。法令は厚生労働省の資料と条文で確認し、根拠を示して説明することを大切にしています。

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自律的管理の全体がわかったら、出発点になるSDSと、中心になる化学物質管理者の役割も確かめておきましょう。

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