- 酸欠とは何か、どのくらい危ないのか知りたい
- どんな場所で酸欠が起きるのか確かめたい
- マンホールやタンクに入る作業で、何をすれば酸欠を防げるのか知りたい
- 酸欠(酸素欠乏)とは何か、酸素濃度ごとの症状
- 酸欠が起きる原因と場所
- 酸欠を防ぐ手順と、救助で二次災害を起こさない方法
酸欠(酸素欠乏)とは、空気中の酸素の濃度が18%未満になった状態です(酸素欠乏症等防止規則第2条)。ふつうの空気は約21%で、16%で頭痛や吐き気、12%でめまいや筋力低下、8%で失神し7〜8分以内に死亡、6%では瞬時に倒れます。マンホールやタンクの中など、においも色もないまま起きるので、入る前の測定と換気が欠かせません。
酸欠の空気を吸うと、体に酸素が届かず、自分で「おかしい」と気づく前に動けなくなることがあります。かんたんに言うと、「見ても嗅いでもわからないのに、数回吸っただけで倒れる」のが酸欠のこわさです。
- 酸素欠乏症等防止規則 第2条
- 静岡労働局 三島労働基準監督署のリーフレット(酸素濃度と症状)
- e-Gov法令検索「酸素欠乏症等防止規則」
- 静岡労働局 三島労働基準監督署「酸素欠乏症・硫化水素中毒を防止しましょう」(R5.12)
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。
酸素濃度と症状
この表の見方:静岡労働局 三島労働基準監督署のリーフレットの表によります。
| 酸素濃度 | 症状など |
|---|---|
| 21% | ふつうの空気 |
| 18% | 安全の限界(ずっと換気が必要)。これ未満が「酸素欠乏」 |
| 16% | 頭痛、吐き気 |
| 12% | めまい、筋力の低下(自力で逃げられなくなる) |
| 8% | 失神して倒れる。7〜8分以内に死亡 |
| 6% | 瞬時に倒れ、呼吸が止まり、死亡 |
酸欠と硫化水素中毒の違い
酸欠(酸素欠乏症)
- 酸素が18%未満の空気を吸って起きる
- においも色もない
- タンク・井戸・冷凍車の中、窒素が流れ込んだ場所など
硫化水素中毒
- 硫化水素が10ppmを超える空気を吸って起きる
- 卵が腐ったにおい。ただし濃いとにおいを感じなくなる
- 汚水槽・マンホール・下水など、汚水や汚泥のある場所
汚水槽やマンホールのように、酸欠と硫化水素の両方が起きやすい場所での作業は「第二種酸素欠乏危険作業」として、酸素と硫化水素の両方を測ります。
- 酸素欠乏症等防止規則 第2条・第3条
- 静岡労働局 三島労働基準監督署のリーフレット
- e-Gov法令検索「酸素欠乏症等防止規則」
- 静岡労働局 三島労働基準監督署「酸素欠乏症・硫化水素中毒を防止しましょう」(R5.12)
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

酸欠が起きる原因と場所
この表の見方:静岡労働局 三島労働基準監督署のリーフレットの7つの原因をまとめました。
| 原因 | 起きやすい場所の例 |
|---|---|
| 物がさびる(酸化) | 鉄のタンク・船倉の中、くず鉄や石炭を入れた場所、井戸 |
| 穀物・木材などの呼吸 | 穀物・飼料の貯蔵庫、原木やチップの貯蔵施設 |
| 腐敗・微生物の呼吸 | し尿・汚水のタンク、暗きょ・マンホール・ピット、しょうゆや酒を入れたことのあるタンク |
| 人の呼吸 | 中から開けられない冷蔵庫・タンク |
| 窒素などのガスが流れ込む | 窒素を入れたタンク、アルゴンを使う溶接をしているピットやタンク |
| ドライアイスなどのガスがたまる | 冷凍庫、冷凍食品を運ぶトラックの荷台 |
| 酸素の少ない空気が噴き出す | 埋立地・トンネル、地下のガス配管の付近、消火設備の誤作動した部屋 |
当てはめ例
この表の見方:どれも架空の例ですが、同じような死亡災害が実際に起きています。
| 場面(架空) | 危ない理由 |
|---|---|
| 2か月閉めたままだった地下ピットに、水抜きのため入る | 閉め切った場所では酸素が消費されている |
| ドライアイスで冷やした冷凍車の荷台で、荷を整理する | ドライアイスの気化した二酸化炭素がたまる |
| 窒素を流していたタンクの点検で、点検口から上半身を入れる | 窒素で置き換わった空気は、一息で倒れるほど酸素が少ない |
厚生労働省の分析では、酸欠の災害の原因として、酸素濃度の測定をしていなかった(64%)、換気をしていなかった(56%)、空気呼吸器などを使っていなかった(44%)が突出していました(平成8〜17年)。
- 静岡労働局 三島労働基準監督署のリーフレット(発生原因・災害事例)
- 厚生労働省「酸素欠乏症等災害発生状況の分析」
- 静岡労働局 三島労働基準監督署「酸素欠乏症・硫化水素中毒を防止しましょう」(R5.12)
- 厚生労働省「酸素欠乏症等災害発生状況の分析」
情報の確認時点:2026年10月。

酸欠を防ぐ手順
入る前に測る。その日の作業を始める前に、酸素の濃度(汚水槽などでは硫化水素も)を測り、記録を3年保存します(第3条)。
換気する。酸素18%以上(硫化水素10ppm以下)を保つよう、作業中も換気を続けます。純酸素で換気してはいけません(第5条)。
換気できないときは空気呼吸器。換気できない・しにくいときは、空気呼吸器・送気マスクを人数分備えて使わせます(第5条の2)。防じん・防毒マスクでは酸欠を防げません。
見張りを置き、人数を数える。作業の状況を見張る人を置き、入るときと出るときに人数を点検します(第8条・第13条)。
異常があればすぐ退避。酸欠のおそれが出たら、すぐに作業をやめて全員を外に出します(第14条)。
倒れた人を見て、助けようとそのまま中に入り、助けに入った人も倒れる「二次災害」が繰り返し起きています。救助は、空気呼吸器などをつけてからでなければ、絶対に入ってはいけません(第16条)。まず外から大声で人を呼び、119番に通報します。
- □ その場所が酸欠の危険のある場所か、作業の前に確かめた
- □ 入口に立入禁止の表示をした
- □ 酸素欠乏危険作業主任者を選び、作業を指揮させている
- □ 作業する人に特別教育をした
- □ 入る前に酸素(と硫化水素)を測り、記録した
- □ 換気を続け、空気呼吸器・はしご・ロープなどの避難用具を用意した
- □ 見張りの人を置き、入退場の人数を数えている
義務(罰則あり) 酸欠の危険のある場所の作業では、測定・換気・作業主任者の選任・特別教育などが酸素欠乏症等防止規則で義務づけられています。
酸欠の作業で選ぶ作業主任者など、作業主任者が必要な作業を一覧で確かめられる
- 酸素欠乏症等防止規則 第3条・第5条・第5条の2・第8条・第9条・第11条〜第17条
- e-Gov法令検索「酸素欠乏症等防止規則」
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

よくある質問
まとめ:入る前に測り、換気し、助けに入るときも呼吸器
- 酸欠は、酸素の濃度が18%未満になった状態で、数回の呼吸で倒れることがあります。
- マンホール・タンク・汚水槽・冷凍車の荷台など、閉め切った場所で起きやすくなります。
- 入る前に酸素(と硫化水素)を測り、換気を続け、見張りを置きます。
- 倒れた人の救助は、空気呼吸器などをつけてから行います。
つまり、閉め切った場所に入る作業では「測る・換気する・見張る」を毎回の決まりにし、救助に飛び込まないことを全員で共有することが大切です。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、職場の安全と健康のルールを図解しています。法令は厚生労働省の資料と条文で確認し、根拠を示して説明することを大切にしています。


