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- 熱中症対策の義務化と聞いたが、何をすればいいのかわからない
- うちの職場は対象なのか、屋内でも関係あるのか知りたい
- 守らなかったときの罰則が気になる
- 義務化で新しくやらなければいけない3つのこと
- 対象になる作業の見分け方(WBGT・気温・時間)
- 準備のチェックリストと罰則
2025年6月1日から、WBGT28度以上または気温31度以上の場所で、連続1時間以上か1日4時間を超えて行う作業について、事業者は「報告体制をつくる」「対応の手順を決める」「その2つを作業者に知らせる」ことが義務になりました(労働安全衛生規則第612条の2)。WBGT(暑さ指数)は、気温・湿度・日差しなどをまとめて、体にかかる暑さの負担を表す数字です。
かんたんに言うと、「具合が悪い人が出たら、誰に知らせて、何をするか」を、暑い作業を始める前に決めて、全員に伝えておく義務です。熱中症で亡くなる例の多くは、初期の症状を放置したり、対応が遅れたりしたことが原因とされています。それを防ぐための決まりです。
- 労働安全衛生規則 第612条の2(2025年6月1日施行)
- 労働安全衛生法 第22条(健康障害の防止)
- e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」
- 厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」(令和7年5月20日 基発0520第6号)
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。
義務になった3つのこと:報告体制・対応手順・周知
義務化で求められているのは、次の3つです。どれも「あらかじめ」、つまり暑い作業を始める前に用意しておく必要があります。
この表の見方:左が義務の名前、まん中が具体的にやること、右が義務の強さです。
| 義務 | 中身 | 強さ |
|---|---|---|
| 1. 報告体制をつくる | 熱中症の症状がある人や、症状が出ている人を見つけた人が、誰に報告するかを決める | 義務(罰則あり) |
| 2. 対応の手順を決める | 作業から離れさせる、体を冷やす、必要に応じて医師の診察を受けさせる、などの手順を作業場ごとに決める | 義務(罰則あり) |
| 3. 作業者に知らせる | 1と2を、その作業をする人全員に周知(知らせて、わかるようにすること)する | 義務(罰則あり) |
通達では、手順として「事業場の緊急連絡網」「緊急搬送先の連絡先」「必要な措置の内容と手順」を、事業場ごとにあらかじめ作っておくよう示されています。つまり、連絡先と動き方を紙やデータにまとめ、作業する人が見られるようにしておけば、3つの義務を果たす形になります。
ここでいう「作業者」には、労働者だけでなく、同じ場所で作業する個人事業者など、労働者以外の人も含まれます。協力会社や一人親方と同じ現場で働く場合も、体制と手順の対象に入れましょう。
- 労働安全衛生規則 第612条の2 第1項(報告体制と周知)・第2項(措置の手順と周知)
- 厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」(令和7年5月20日 基発0520第6号)
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

対象になる作業:「暑熱な場所」で「1時間以上か1日4時間超」
義務の対象は「熱中症を生ずるおそれのある作業」です。通達で、次の2つの条件をどちらも満たす作業と決められています。
| 条件 | 中身 |
|---|---|
| 場所 | WBGT(暑さ指数)が28度以上、または気温が31度以上の場所。出張先や、作業場所の間の移動中も含む |
| 時間 | その場所で、継続して1時間以上、または1日あたり4時間を超えて行うことが見込まれる作業。臨時の作業も含む |
暑さの判断は、原則として作業する場所で測ります。風通しのよい屋外なら、天気予報や環境省の熱中症予防情報サイトの値で判断してもよいとされています。
ただし、2026年3月に厚生労働省が示した「職場における熱中症防止のためのガイドライン」では、予報などの地域の値は実際に測った値より低めに出ることがあるため、直射日光の下、炉などの熱源の近く、冷房がなく風通しの悪い屋内の作業では実測が必要とされています。迷ったらWBGT指数計で測りましょう。
判定フロー:うちの作業は対象?
いいえ → 義務の対象外。ただし、作業の強さや服装によっては、同じ対応をするよう努める
いいえ → 義務の対象外。ただし、同じ対応をするよう努める
当てはめ例:3つの職場
この表の見方:どれも架空の職場です。実際は、その日の作業場所の暑さと作業時間で判断します。
| 職場の例(架空) | 対象か | 理由 |
|---|---|---|
| 夏の屋外駐車場の警備(1日8時間) | 対象 | 気温31度以上になる日に、1日4時間を超えて屋外にいる |
| 冷房が効いた事務所 | 対象外 | WBGT28度・気温31度に届かない。ただし外回りの営業は別に考える |
| 炉のそばで作業する鋳造工場 | 対象 | 季節に関係なく、炉の近くは暑熱な場所になりうる。測って判断する |
「屋内だから関係ない」は間違いです。工場・倉庫・厨房など、屋内でもWBGT28度以上になる場所は対象になります。
- 基発0520第6号 第3の1(1)イ・ウ(暑熱な場所と対象作業の考え方)
- 職場における熱中症防止のためのガイドライン 第2の2(WBGT値の把握)
- 厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」(令和7年5月20日 基発0520第6号)
- 厚生労働省「職場における熱中症防止のためのガイドライン」(令和8年3月18日 基発0318第1号の別紙)
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

直射日光の下や熱源の近くなど実測が必要な場所に備えて、黒球つきのWBGT指数計を1台用意しておくと、対象かどうかをその場で判断できます。黒球式のWBGT計「熱中アラーム TT-562」は、販売ページに JIS B 7922 準拠(クラス2)と表示されています。WBGTのほか気温と湿度も表示し、危険度に応じてアラームで知らせます。
対応の手順に入れること
手順は、作業場ごとに、現場の実態に合わせて決めます。通達の例を参考に、少なくとも次の流れが入っていると安心です。
見つけたら、すぐ報告する。本人が「おかしい」と感じたとき、まわりの人が様子の変化に気づいたときに、決めておいた担当者へ知らせます。
作業から離れさせる。涼しい場所へ移し、ひとりにしません。
体を冷やす。服をゆるめ、首・わきの下・太ももの付け根などを冷やします。
医療機関につなぐ。意識がおかしい、呼びかけに答えない、自分で水が飲めないなどのときは、ためらわず119番に通報します。
記録して振り返る。いつ・どこで・どの作業で起きたかを記録し、次の対策に生かします。
手順は、医療の判断を現場に求めるものではありません。迷ったら医療機関や救急に相談する、と手順に書いておきましょう。症状の見分け方や重症度は、医師や産業医の判断に従ってください。
- 労働安全衛生規則 第612条の2 第2項(離脱・冷却・医師の診察などの措置と手順)
- 基発0520第6号 第3の1(1)オ(緊急連絡網・搬送先・手順の作成)
- 厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」(令和7年5月20日 基発0520第6号)
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。

義務化への対応チェックリスト
夏の前に、次の項目を確認しておきましょう。印刷して、作業場ごとに1枚ずつ使えます。
自社の実情に合わせて書き換えて使ってください。
罰則と、見落としやすい点
第612条の2は、労働安全衛生法第22条(健康障害を防ぐ措置)にもとづく決まりです。第22条に違反すると、第119条により6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。第122条(両罰規定)により、会社にも罰金が科されます。
| 見落としやすい点 | 正しくは |
|---|---|
| 夏だけ、屋外だけの話だと思っている | 屋内でも、季節に関係なく、条件を満たせば対象 |
| 手順は会社に1つあればよい | 作業場ごとに、実態に合わせて決める |
| 社員だけに伝えればよい | 同じ場所で作業する協力会社・一人親方などにも周知する |
| 対象外の作業は何もしなくてよい | 作業の強さや服装によっては、同じ対応をするよう努める |
罰則を気にするより、「暑い日の朝に、誰が見ても動ける状態か」を確かめることが大切です。熱中症の休業4日以上の死傷者は2024年に1,195人で、調査を始めてから最多でした(厚生労働省の通達)。
- 労働安全衛生法 第22条・第119条・第122条
- 基発0520第6号 第1(改正の趣旨)・第3の1(1)カ
- e-Gov法令検索「労働安全衛生法」
- 厚生労働省「労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行等について」(令和7年5月20日 基発0520第6号)
法令の確認時点:2026年10月。改正されることがあるため、最終的な判断は所轄の労働基準監督署に確認してください。
よくある質問
まとめ:暑い作業の前に「報告先」と「動き方」を決めて伝える
- 2025年6月1日から、熱中症対策は事業者の義務になりました(労働安全衛生規則第612条の2)。
- 対象は、WBGT28度以上か気温31度以上の場所で、連続1時間以上か1日4時間を超える作業です。屋内も含みます。
- やることは、報告体制・対応手順(作業場ごと)・作業者への周知の3つです。
- 違反すると、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象です。
つまり、暑い時期が来る前に、チェックリストで「誰に報告し、何をするか」を決めて、全員に伝えておけば安心です。
メーカーで回路設計と生産技術(品質改善)に携わってきた経験をもとに、職場の安全と健康のルールを図解しています。法令は厚生労働省の資料と条文で確認し、根拠を示して説明することを大切にしています。


